清水賢二 in New York





NY一週間滞在日記 2008年1月21日〜28日

どうしてもヒューストン・パーソンが聴きたい!
大好きでここ4、5年くらいもうヒューストンのCDばかり狂ったように聴いてるのです。
もう73歳らしいのでいつ逝くか分かんないし!なんて縁起でもないですが、、北九州の井島さんが一緒にレコーディングしたらしいので元気だとは思いますが。
とにかくNYに聴きに行こうと思い立った。
夏にも行ったNYハーレムのレノックスラウンジに隔月で出ている。
二ヶ月前にお店にmailで問い合わせたら、10日後ぐらいに
Hi Ken G,
because of your interest, we decided to book Houston Person Jan. 25 and 26, 2008.
と返事が返ってきた。
鳥肌が立った。
これは行くしかない!
早速航空券とホテルを予約。

何人かNY在住のミュージシャンの友達が居るので「もうすぐNY行くよ」と、行く5日くらい前にメールを送った。
そしたら、ジェイク・ラングレイというトロントで会ったことがあるギタリストから「そうか、じゃあNY居る間にレコーディングしようよ。良いスタジオ知ってるしお前とオルガントリオでどうかな?」と返ってきたのだ。
最初意味が分からなかったが、どうやらそのままの意味らしい。費用も出せる範囲だ。
一も二も無く「やるやる!やることに決めた!」と返事し、NYへ発つ3,4日前にスタジオもミュージシャンも大丈夫だとジェイクから連絡がありレコーディングが決定。
こんなこともあるんですね。。。
ジェイクはトロントのサン・ムラタさん(バイオリン)の親しい友達ですが僕はmailは何度も交わしていたが、会ったのはトロントでたった1回だけ。 しかも一緒にやったことは無いのです。
でも何かハメようとか、そういう意図は全く感じられない。
とにかく流れに身を任せるのが僕の流儀なので、今回も流されることにした。
ヒューストンを聴きに行くツアーが、同時にレコーディングツアーにもなってしまいました。
バタバタで録る曲などをジェイクとe-mailで打ち合わせた。
そして21日、単身いざNYへ!

1/21月曜
2005年1月、2007年7月、以来の3度目のNY。
成田経由でニューヨークJFK空港へ。
何回乗っても13〜14時間はキツイ。
寝れれば楽なんだけどなかなか寝れない。
期待と不安が入り交じってるからだろうか。。
映画見たり本を読んだり細切れに寝たりしてやり過ごす。
やっとJFK空港に到着し、エアトレインと地下鉄を乗り継いで計7$、予約していた安宿に19:30頃到着。
ペンステーションの近くで交通の便はかなり良い。
着いてシャワーを浴びたら妙に目が覚めてしまい、スモークにJOHN FARNSWORTH quintetのギグ&セッションを聴きに行った。
一応は楽器を持って行ったが、やったら遅くなりそうなので今日は聴くだけにした。
しかしスモークいつもお客さん多い!
セッションに入って2〜3曲聴いてホテルに帰って就寝。

1/22火曜
今日はLOFISHというスタジオに朝の11時入りだ。
まだ時差ボケなのか何なのかも分からない状態。
住所を頼りに捜すが最初見つからない(^-^;
スタジオが入っているビルをやっと見つけ、ジェイクに電話し再会!
オルガンのロンと、ドラムのジョーを紹介してもらう。
マイク・スターンや日本人だと大野俊三さんなども録音したという立派なスタジオだ。
中に入るともうギターもオルガンもドラムもほとんどセッティングが終わっている。
少し焦って僕も楽器を出しウォーミングアップ。
テーマをやる程度の軽いリハをして、早速録ってみる。
僕のオリジナルも5曲もって行ったのだが、ジェイク以外は皆初見なのに、みんな素晴らしい演奏だ♪
初見力は勿論、一度テーマをやっただけで雰囲気まで完全に把握してしまう。
いやそれどころか、想像以上のグルーブとバランス感覚で非常に気持ちいいサウンドが出ている。
あとは僕がそこそこやればイイわけで、やつらはどのテイクも完璧だった。
僕が良くない曲を3〜4曲テイク2を録ったが、あとの半分以上の曲は1テイクしか録らなかった。
とにかくジェイクがその場の雰囲気を盛り上げて、僕や他のメンバーのプレイヤーを褒め、信じられないくらいスムースにレコーディングが進んだ。
ジェイクはまだ34才くらいみたいだが、プレイも人間も出来過ぎだ。
僕の言いたいことを汲み取ってくれて、英語力のなさもあまり気にならない。
勿論僕的には自分のプレイに気に入らないところは沢山あるが、バンド全体的には凄くサウンドしている。
休暇しながらで3時半頃には全9曲を録りきってしまった。
イイのだろうか?
しかし、良いのか悪いのか判断する判断力も、それ以上録音する体力も残ってはいなかった。
とりあえずレコーディングは終わった。
ジェイクはじめメンバー、スタジオのスタッフに感謝!
帰って一寝入りして元気になってきたので、スイートリズムに黒人女性ボーカルを聴きに行った。
奇しくもバックはレコーディングと同じオルガントリオだった。
楽しかった♪
その後ハシゴ、スモールズにグラント・スチュアートを聴きに行った。
とにかく凄かった!
偶然トロント在住のベーシスト、ブランディにも会った。
世の中狭いですね!
ジェイクと今日レコーディングしたんだよ♪なんて話を少しした。
さすがに疲れてスモールズは1ステージ聴いて帰って就寝した。

1/23水曜
今日はミックスダウン。
昨日ジェイクが「あす朝10時頃電話してくれ」というので、てっきりそれから直ぐスタジオ入って何時間もかかってミックスするんだろうなと思ってたら、電話すると「夜7時頃スタジオに来て」という。
気が抜けて、時差ボケと疲れもあって昼間は爆睡。
夕方なんとか這うようにしてベッドから出てシャワーを浴びてスタジオへ。 そしたらジェイクが既に殆どミックスしてくれてて、一曲ずつ一緒にチェックしていった。
良い音だしバランスもイイ。
何の問題も無い。
昨日「うわぁ、こりゃワシ、ヤベェなぁ(汗)」と思ったところも一日経って聴いてみると昨日思ったほどではない。
例のごとくジェイクは「ビューティホー」とか言って持ち上げてくれる(笑)
早く終わらせたいからか?などとも思うが、言い方にイヤミや臭さが無い。
とにかく全体的にはなかなか良く聞こえるのだ。
オーケーとしか言いようが無かった。
「こりゃいいCDが出来るぜ、けんじー」なんてまた最後に持ち上げて、CD-Rに焼いてくれペロンと渡された。
あっけなく修了した。
ジェイク仕事が早すぎ!
しかし何の文句も無い。
文句があるとしたら自分のプレイだけだ(爆)
しかしもう終わってしまった。
CDウォークマンなども持ってきていない。
日本に戻るまでは聴くことはできないし、あとは色んなライブを楽しもう。 一番の楽しみは、勿論金土にあるヒューストンのライブだ。

ジェイクはあさってからロバータ・フラックのツアーでフロリダに行くと言っていた。
それかと思うと僕みたいなのにレコーディングを誘ってくれたりして、それも非常に楽しんでやっている。
余裕があって、遊び心がある。
何にも固執していない。
いやぁ、この人は本当に凄いし、今からもどんどん凄くなっていくんだろうなと思った。

今日はブラッド・メルドーがビレッジ・バンガードでやっている。
行ってみたがsold out。
仕方なく少し歩いて55BARに行くと、マイク・スターンのギグだった。
ソロは超長いがどこまでも盛り上がっていく♪
ノリノリの最高のステージだった!
本当に楽しかった!

1/24木曜
あまりにも天気がいい。
昼間は何もすることが無いし、外出ても寒いしなぁ。。
しかしフッと思いついた。
たまには観光のひとつでもするか、そうだ!エンパイヤステートビルに上がったら無茶苦茶気持ちいいだろうなぁ!
歩いて数分なのですぐ着きチケットを買いエレベーターへ。
予想通りむちゃくちゃ気持ちが良かった。
レコーディングも済んだし、この眺望を見て晴れ晴れとした気分になった。

夜は日本で2、3回会ったことあるNY在住ピアニスト、エリ・ヤマモトさんのギグをアーサーズ・タバーンに聴きに行った。
凄く歓待していただいて、しかも2曲もシットインさせていただいた。
ありがとうございました!
そのあと、イリジウムにデビッド・ニューマンというヒューストンと同世代のサックス奏者のバースデイギグを聴きに行った。
フィル・ウッズなどスペシャルゲストが沢山入れ替わり立ち代り演奏し、非常に贅沢なステージだった。
ヒューストンもそうだが、この方も日本ではあまり有名ではないが、向こうでは超大御所だということがよく分かる。
向こうの知名度と日本での知名度は必ずしも一致はしない。
寒いが非常に楽しい夜だった♪

1/25金曜
今夜と明日の夜はいよいよ待ちに待ったメインイベントのHouston Personのギグだ。
場所はビリー・ホリディも出演していたという、ハーレムの歴史あるお店レノックス・ラウンジ。
昼間は例のごとく爆睡し(笑)夜に備えた。
去年の夏トロントで何度か会ったドラムを叩くユースケ君という男の子に、昨日アーサーズ・タバーンで偶然会ったので、彼ともレノクッスで落ち合って一緒に聴くことにした。
しかし、この大都会のNYでブランディとユースケ二人に偶然に会うとは奇遇だ。
ちょっと早めに出たつもりだったが、レノックスに着くと開演の8時は過ぎていてもう演奏が始まっていた。
入り口近くにユースケが座っていて、すぐ横に座った。
ちょうど一曲目が終わったところだという。
流れてくる音に集中した。

紛れも無くヒューストンの音だ。
ピアノも近年のアルバムに良く参加しているピアニストに違いない。
アルバムと全く同じ空気が流れている。
まさに今僕はリアルにその空気の中に居るのだ。
夢のようだった。
形容しがたいヒューストンのサウンド。
そこには全てのものがある。
優しさも激しさも雄大さも繊細さも寂しさも豊かさも。
今こうやって文章を書いてるだけで感動が再び襲ってくる。。
すみません、本当に僕は馬鹿です、ヒューストン馬鹿。

1ステージ目が終わって休憩時間恐る恐るヒューストンに話しかけてみた。
「おぉ、お前がけんじーか!ランディから電話があって話は聞いてるぞ」
日本でおととし去年と何度か共演したことがあるNY在住の素晴らしいギタリスト、ランディ・ジョンストンがヒューストンと親しいらしく、「聴きに行くならヒューストンに電話しといてやるよ」と言ってたのだが、本当に電話してくれてたのだ。
しかも名前を何故か気に入ってくれたみたいで「けんじー?、けんじー!、けんじー♪」と連呼してくれたりした。
頭おかしいのか?ヒューストン?(^^;
「そうか日本の福岡から来たのか。そういえばあそこのテーブルの友達も福岡から来てるぞ。紹介してやろう」
と日本人らしい女性二人連れのテーブルに。
北九州出身ボーカリストと関西出身のピアニストで、どちらもNYに何年も住まれてるそうです。
ヒューストンの追っかけも何年もされてるそうで、ヒューストンとも勿論個人的にも親しく、一緒に色々話すことが出来て、ヒューストンマニア話題も出来て非常に嬉しかった。
とにかく、色んな方面からヒューストンと繋がることが出来た気がして嬉しかった。

1/26土曜
昼間ランディ・ジョンストンから電話がかかってきた「ヒューストンにあったか?今日は俺も行くぞ」
ということで夜レノックスで落ち合うことに。
昼間は福岡で同じイベントで出演したことがある、やはりNY在住ピアニスト野瀬栄進さんと会い、昼飯を食いながら話をした。
今度はNYか日本で何かやりましょうと約束し、彼はニュージャージーのほうに演奏に向かった。
昼間ディジーズクラブでフリーライブをやっているようだったので、行ってみたがちょうど二本違うバンドがやる間の時間で、待っていると昼飯に飲んだワインが効いて眠くなってきたので一旦ホテルに帰って爆睡。
夜に備えた。
今日は昨日よりも早く出たつもりだったが、土曜で地下鉄の本数が少ないのと工事もやってて、遅れていたようで、レノックスにはまた遅刻。。
でもおそらく一曲目だ。
ランディはまだ来ていないようだったので、一人でゆっくり聴き入る。
最高だ。
言うまでもない。
休憩時間、ヒューストンが「けんじーー!」と挨拶してくれた。
ちゃんと覚えていてくれた!
涙が出そうになるくらい嬉しい!
二部の途中からランディが来た。
改めてランディからヒューストンに紹介してもらった。
1ステージ1時間が3回、3時間。
どっぷりヒューストンサウンドにひたった。
昨日も合わせたら6時間だ。
もう死んでもいい。。
ランディは先に帰ったので、僕はヒューストンたちが片付けるのを一人でしばらく待っていたが、そろそろ帰ろうとヒューストンに「それじゃあ、行くね」と声をかけた。
ヒューストンは「ちょっとまて、わしが送っていくから」という。
え?「いやいや、地下鉄で帰れるから大丈夫」と返すと
「そうかぁ、」と納得したようだったが、
もう一回帰る体制に入って行こうとすると、
「いやまて、やっぱりワシが送っていくから、いいからそこでおとなしく待ってろ」と言われ、嬉しいやら緊張するやら。。
ヒューストンは他のメンバーにギャラを渡したりして常連やお店のスタッフ、メンバーにカッコよく挨拶を交わし「それじゃ行こうか」と一緒にお店を出た。
すぐ近くに止めてある馬鹿でかい車に乗せてくれ、家とは全然方向違いなのに、僕のホテル近くまで送ってくれた。
車の中で一対一で割と色々しゃべった。
驚いたことは京都のピアニスト市川修さんを覚えていたことだ。
生前市川さんにヒューストンと一緒に写っている写真を見せてもらったことがあったので、聞いてみたのだ。
2年前に亡くなったと教えたら悲しそうな顔をした。
子供は4人、孫は7人いるそうだ。
「けんじー、新しい友達が出来て嬉しいよ!」
といってくれた!
僕の勘違いかもしれないが、何かが通じ合えた気がした。
こんな大きな存在の人と、一瞬そんな気がしただけでも僕にとっては一生の財産だと思った。

ということで今回のNYは6泊と短かったのですが、本当に一生忘れられない一週間となった。
すべてに感謝。。
NY一週間滞在日記 完!

newyork 2008 photo album


そしてお知らせです。
この1月にNYでレコーディングした音がWhat's New Recordsさんから6/18(水)にリリースされることになりました。
"CRY OF THE WILD" / KEN G
KEN G (tenor saxophone)
JAKE LANGLEY (guitar)
RON OSWANSKI (organ)
JOE STRASSER (drums)
Recorded at Lofish Recording Studios, New York
おたのしみに!



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